アラビア書道の主な書体
日本の書道には楷書、草書、行書などの書体があるようにアラビア書道にも、いくつかの書体があります。現在アラビア書道のコンテストとしてもっとも権威があると言われているイスタンブールで開催される世界書道競技会では12書体の部門で競技が行われています。このうち良く使用される7書体に就いて簡単に説明します。

書体の呼び名

特 徴

ナスヒー書体


コーランの本文を書き写すために開発された書体で、最も標準的な形をもちます。読みやすく、アラブ世界において印刷用活字書体として広く使用されています。

ルクア書体


アラブ人が手書きで文字を書くときに使う書体。シンプルさと線の力強さに特徴があります。広告用の大きな文字としても使われることが多いです。

ディーワーニー書体
オスマン・トルコ帝国の政庁(ディーワーン)で開発された書体。スルタン(11世紀以降
イスラム世界の君主を示す称号)が発布する勅書(ちょくしょ)などがこの書体で書かれました。曲線文字の大胆な流れと流麗さに特徴があります。

ジャリー・ディーワーニー書体


上記のディーワーニー書体のバリエーション。芸術的な書道作品を制作するためだけに使用され、日常生活で見ることはまれです。特徴は文字に付加される装飾点の多さにあります。

スルス書体
コーランの章句を大きく特別に書くために開発された書体。アラビア書道の書体のなかで最も芸術性の高いものです。特徴は線の力強さと深みのある動きにあります。

ファーリスィー(ナスタリーク)書体


14世紀頃ペルシャ(現在のイラン)で開発された書体で高い芸術性を持っています。特徴は流麗さ、優雅さです。ペルシャの詩集など文学的テキストに専ら使用されています。

クーフィー書体


イラク南部のクーファという町で開発された古い書体。特徴は直線や円による幾何学的な書体です。唐草模様を配した豪華なデザイン文字装飾書体として使われています。

(出典:アラビア文字を書いてみよう読んでみよう 本田孝一/師岡カリーマ・エルサムニー著 白水社)