クルアーン(コーラン)

クルアーンはイスラム教の聖典です。114章から構成され、各章の長さはまちまちですが、ほぼ長い順に配列されています。概して初期の啓示ほど短く、時代が下るほどに長くなっています。アラビア語ではアル・クルアーン(アルは冠詞)と呼び、”唱えるもの”という意味になります。脚韻を踏んだ散文詩となっているため、コーランの読誦は詩の朗唱のように快く耳に響きます。

クルアーンの翻訳

コーランの翻訳は原則として禁じられています。クルアーンは、ムハンマドに対してアラビア語で伝えられたことが重視され、翻訳されたものはアッラーの言葉であるクルアーンを正しく伝えられないと解釈されるようになりました。厳密にはアラビア語で書かれた原典が「クルアーン」であるとみなされるようになり、現在に至っています。実際には、布教やアラビア語を母語としないイスラム教徒の理解の助けとするために、クルアーンを翻訳したものは編纂され出版されていますが、これはあくまで注釈と位置づけられています。

クルアーンの編集

ムハンマドが亡くなった時にはクルアーンはまだ書いたものでは存在しませんでした。ところが、戦役でクルアーンを伝える読誦者たちの多くが亡くなったため、初代カリフのアブー=バクル(634年没)は散逸を防ぐため、ムハンマドの秘書を務めたザイド・イブン=サービトに命じ、第1回の編纂を行わせました。その後、第3代カリフのウスマーンの時代に再びザイドを中心として、人々の記憶からだけではなく、様々なものに書き留められていた啓示を編纂し、現在の形になりました。クルアーンは650年ごろに完成したと言われています。

クルアーンの内容

クルアーンには、イスラム教徒にとって精神的、肉体的生活を律するための規範であり、信者の価値判断を下す際の基準まで書かれています。例えば、「飲酒や賭け事をしてはいけない」(第5章90節)、「豚肉は食べてはいけない」(第2章173節)、「妻は4人まで娶ることができる」(第4章3節)、「利子を取ってはいけない」(第2章275節)など有名な文言も書かれています。